とりあえず籠池夫妻の思想信条については脇においておく。
この夫婦はとにもかくにも小学校設立のために走り回り、府議や国会議員のもとへ足を運んでいた。が、たとえ与党にいても力のある議員はそうそういるわけではない。
学校入学の陳情を受けて合否情報を先に学校側から聞き出し、合格していれば、それが実力であるにもかかわらず「なんとか合格しました」といってカネを受け取り、不合格であれば「残念ながらダメでした」と伝えるような事務所はゴロゴロある。
実際、籠池氏が証人喚問で名前を挙げた議員に相談してもまったく物事は進まなかった(「問い合わせはしたがそれだけ」と言った議員がいたが、まさにそれしかせず、省庁からはまったく相手にされなかったわけである)。

ところが、時の総理大臣夫人がやってきて(籠池証言を信じるなら)100万円を寄附してくれて、さらに「一人でさせて申し訳ありません」と言ったという。そこには言外にか実際に言葉に出してかはわからないが、「これからは私(安倍晋三も含む)も協力します」というニュアンスが濃厚に出ていたのではないか? もしそうなら、その際に夫人が「具体的なことは谷氏とやり取りしてください」と言った可能性は十分にある。このことをして、籠池氏は「非常にうれしく、これで物事が進んでいくと思った」のであり、その後、谷氏に手紙を書いたという推測は成り立ち得るだろう。
なにしろそう言ってくれた相手は役立たずのチンピラや三下ではない、総理大臣夫人なのである。
籠池夫妻の喜ぶまいことか。そりゃあ直後の運動会で「安倍首相ガンバレ、安倍首相ガンバレ、安保法制国会通過よかったです」ぐらいのことを幼稚園児に言わせたくなるのもムリはない(無論、それが正しいと言っているわけではない)。
しかも、その後現実に、与党の連中も認める「ムリ筋」案件のハードルが消え去っていくのだ。
まことにもって総理大臣の妻の威力、陳情処理能力は絶大だったわけである。

蛇足だが、二十年以上前、私は一度だけ付き合いのあった自民党の大物に属する代議士秘書に、知人のことで陳情したことがある。その効果はまことに絶大で、まさに神風。満額回答の知らせを受けた知人は狐につままれた顔で私を見て「信じられない」と言ったものだった。
ことほどさように陳情が威力を発揮することがあるわけだが、もちろん秘書を通じて問い合わせを受けた側も、背後にいる議員のランクを見ているわけで、それが総理大臣夫人(=総理大臣)であればどんなムリ筋でも通そうとするのは当然のことである。

それにしても、、、
このたびの証人喚問を見ていて明らかだったのは、籠池氏を偽証罪で引っかけようという与党の満々の「意欲」である。当初は参考人招致でさえ消極的だった連中が、「総理を侮辱した」という理由で証人喚問に応じたのは、一にも二にも100万円の寄附をいい始めた目障りな人間を「偽証罪」でぶち込むためであろうし、いまもそれを虎視眈々とそれを狙っている。相手が民間人であろうがなんだろうが知ったことではない。
これは安保法制の時も顕著であったが、安倍政権の最大の特徴はリーガルマインドの著しい欠如であり、目的のためなら法律などどう捻じ曲げてもよろしいという姿勢は際立っている。
そういう連中が共謀罪を手にしたらどうなるか? 自分たちの気に入らない、目障りな人間をどんどんぶち込んでいくことは火を見るより明らかであり、この法案の目的はその一点にある。
この最悪の法案を潰すための最善手は、アッキード疑獄で安倍政権を潰すことだろう。