今上天皇が安倍晋三と真逆の憲法感を持っていることは、これまでのご発言を見る限り疑いようがない。
私は基本的に天皇制には反対なのだが、それとは別に今上天皇は最良質のリベラリストであり、戦争反対勢力だと認識している。とくに安倍政権になって以降、その存在感は増しており、最後の歯止めでないかとすら思う。
これに対して安倍やそれを取り囲む日本会議の面々が苦々しく思っていることもまた疑いようがない。

昨年、今上天皇がご退位の意向をお持ちであり、またそれに関わるお言葉を述べられて以降、今日までの日本会議系の面々の物言いの不敬さ加減、そして官邸の今上天皇への露骨な嫌がらせには目に余るものがある。

「天皇の生前退位で右派が内ゲバ! 小林よしのりは日本会議や渡部昇一に「天皇を奴隷化する国賊」と激烈批判」~ リテラ

「村宮内庁次長の初仕事は天皇陛下の口封じだったということだ」~ 天木直人のブログ

そうしたなか、新年早々に「おやっ?」というニュースが流れた。

「秋篠宮さまを「皇太子」待遇…「退位」特例法案」~ 読売新聞

皇太子が天皇に即位すれば秋篠宮が皇位継承順位1位になるわけであり、上記の短い記事を読むと金銭的な問題のようにも見える。

ところで、今回の今上天皇ご退位については一代限りの特例法案で対処することになる(その有識者会議での恣意的な議論についてはいまはおいておく)。
そして、これに対しては当然ながら批判もあり、民進党は対案を出すという。

「皇位継承について善き公論を」~ 山尾しおり

上記のブログの中で山尾しおりは「(1)天皇の退位を認めるべきであり、(2)そのためには一時的な特例法でお茶を濁さず、恒久的な制度として皇室典範を改正すべき」とし「政府のもとに設置された有識者会議の議論が、まさに特例法で幕引きさせる方向に進んでいることを危惧します。」と書いている。

そしてその危惧の理由は「今回特例法で対応すれば、時の天皇陛下の地位が、法律成否の手綱を握る時の政権の意向に左右される前例を作ることになります。天皇の地位が時々の政権の影響下におかれてよいとは思えません。」ということである(太字部分は筆者)。

このブログに対しては小林よしのりも支持を表明している。

「山尾志桜里議員のブログを読め!」~ 小林よしのり

以上の流れを見た上で、いま個人的な懸念として浮かぶのは、「皇太子は本当に次期天皇に即位できるのだろうか?」ということである。

以下は数少ないながら見聞した話やニュースから得た認識であることをまずお断りしておくが、まず現皇太子については、父君である今上天皇のお考えを高いレベルで引き継いているものと思われる。また幼少時より「いずれ天皇になる」ことを前提に育てられたということもあり、慎重すぎるきらいはあるが、落ち着いたたたずまいがある。
結婚する時には最後まで小和田雅子さんにこだわり、また愛子さんが誕生以降に都度都度で見せる父親としての大変嬉しそうな顔も好ましい。
誕生日の会見でも、しっかりとした意見を述べ、それがかかって週刊誌ネタとなってしまったこともある。

一方、秋篠宮についてはあまり肉声を聞いたことがなく、どのような考えの持ち主かはわからない。ただ、皇太子とはだいぶタイプが異なるらしいことは、かつて雑誌記者や外務省関係者などから聞いたことがある。もちろん兄弟で異なるのは当たり前だが、もし天皇に即位した場合にどのようなタイプなのかは現時点では見えにくい。

ところで安倍晋三は首相の任期延長を目論んでおり、その行き着く先に憲法改正を目論んでいることは周知の事実である。その場合に天皇の地位についても現憲法とは異なる位置づけをする可能性は十分にあるわけだが、その時の天皇が現皇太子か秋篠宮かでは、相当に状況が異なるように思える。つまり今上天皇タイプの皇太子か、それが不明な秋篠宮かで、天皇の地位についの手の入れやすさも変わってくるように思えるのである。

そこではっきり言うと、安倍と日本会議を中心とするその取り巻きにとって、秋篠宮が天皇である方がいいのではないか? そもそもこのまま男系による皇位継承を続けていけば、いずれ悠仁親王が即位することは間違いない。そしてその父親は秋篠宮である。
男系にこだわる安倍らにとって皇位継承は秋篠宮→悠仁親王の方がスッキリしているということもある。

もちろん、露骨に皇太子を引きずり下ろすようなことはできないし、次の天皇は皇太子になるのが当然であるが、一方で山尾しおりが指摘するように「時の天皇陛下の地位が、政権の意向に左右される」可能性は十分にある。つまりいつでもやろうと思えばできる状況が現出しつつあるわけである。

今後の展開を考えると、特例法が可決した時点で今上天皇のご退位と皇太子の天皇即位への動きが加速するだろうが、一方で「週刊文春」「週刊新潮」といったあたりを筆頭に、皇太子関連のネガティブ記事が出てくる可能性があるように思う(「WILL」「月刊Hanada」などもそうだろう)。その場合、とくに対象となるのは雅子妃と予想され、長らく公務の場に出てくることができなかった雅子妃が皇后としてやっていけるのかというようなキャンペーンが張られ、そのコメントを出す人間として日本会議系の面々が名を連ねることも考えられる。
また、最近の愛子様が明らかに痩せられているのも心配だ。
そしてこういうことがテレビのワイドショーなどで取り上げられ、少しずつ「秋篠宮が早く皇位を継承した方がいいのではないか」という“空気”が醸成されていく……。

以上はあくまでも個人的な懸念だが、とくにここ最近の安倍らの動きというのは、「まさかそこまではしないだろう」というようなことでも平然としてくるので、注意と監視を強める必要があると思うのである。