かつてNHKの将棋番組の正月番組で「大逆転将棋」というのがあった。
これはプロ棋士とアマ(将棋に覚えのある芸能人)が対局するのだが、飛車角落ちなどハンデをつけて最初から指すのではなく、プロの対局の投了図からスタートする。つまりこの対局で勝った棋士の側をアマが持ち、投了した側をプロ棋士が持つのである。

なぜ、すでに勝敗の決まっている局面からなぜスタートするのかというと、実はアマチュアは投了図など見ても、その局面でどちらが勝っているかなどわからないから。
一方、プロは何手、何十手までも先を読み、「こう指すと勝つな」「こう指されると負けるな」というのがわかる。ゆえに、素人からすると「どうしてこんな指しかけの局面で投げちゃうの?」というところで勝負がついてしまうのだ。
そういうところからプロとアマ(もちろんアマ側にはプロのアドバイスが入るが)が対局するとどうなるか?

実はプロの勝負というのは、一手二手の違いで勝敗が決まる。
つまり、アマがその一手二手を間違えるとたちまち勝敗の行方は混沌とし、さらに間違えるとあっという間にプロに逆転され、逆にアッサリと詰まされてしまうのである。

ここ最近、安倍政権はガタガタの様相である。
それは当然のことで、要するにこれまでメチャクチャなことをやってきたのだから(ただしそれを隠して国民を騙し通せたのはマスメディアが全面的に協力しているからである)当然のことだ。
甘利は「事実上のあっせん収賄」で大臣を辞任、その他の閣僚もまあデタラメ放題、そして党内もハチャメチャである(これば小室直樹博士が指摘するところの「アノミー」であるが、その件については別の機会に)。

そうしたなかで今年は参議院選挙が確実にあり、どうやら衆議院選挙も確実にありそうだ。
そして今後のことを考えると、この選挙は重大な意味を持つ。

今のところはどんなに経済状況や社会状況が悪くなっても選挙になれば自民が勝つことが予想されている。しかし、やり方によっては野党が健闘する、もっと言えば勝つことも可能性がないでもない。つまり、詰み筋がまったくないわけではないのだ。
ただ、そのためには一手も間違えるわけにはいかない。
一つ間違えれば、せっかく野党に有利な風が吹き始めたのにそれを生かすことができなくなる。二つ間違えればさらに厳しくなり、三つも間違えれば絶望的だ。

では絶対に間違えてはいけないこととは何か?
それは野党が分裂することで、これはもう火を見るより明らかだ。
ところが民主党は、いまこの一手目から間違えようとしているのだから話にならない。

本日の日経(WEB版)に「前原、小沢氏 10年越しの復縁なるか」という記事が掲載されていた。

夏の参院選に向けた野党間の協力をめぐり、有力議員の接触が盛んになっている。民主党元代表の前原誠司、生活の党共同代表の小沢一郎の会談が発覚したのは先月下旬。民主党政権時代に党を割った小沢と、「反小沢」の代表格の一人だった前原の取り合わせは意外性をもって受け止められたが、野党転落後、2人はひそかに会談を繰り返していた。

という書き出しで始まるこの記事は以下のように締めくくられる(太字は筆者)。

小沢、反小沢の対立による党分裂が民主党の野党転落を早めたといわれる。前原はこの教訓を「好き嫌いで政治をやってはいけない」と周辺に漏らす。小沢との会談はこの戒めを行動で示しているのかもしれない。政界での影響力低下の著しい小沢にとっては、野党結集が復活の最後のチャンス。野党再編構想の行方とともに、2人が再び近づくのか、離れるのかも注目される。

この部分を読んで、正直、唖然とした。
前原は(その周りにいる面々も同じだろうが)、要するにこれまで「好き嫌い」で政治をやってきたというのである。
なるほど、これでは民主が選挙に勝てるわけがない。民主党政権樹立の最大の功労者である小沢を追い出し、今共産党を含む野党との連携を拒んでいるのも、つまるところ「嫌い」だからとういことだ。
アホか。

自民党はそういうところが民主党とは真逆である。
つまり彼らは嫌いだろうがなんだろうが、最終的に自分のトクになること(=政権の座にいられる)なら何にでも手を出す。だから社民党の党首を総理大臣に担ぐことだって厭わない。
そうして首尾よく政権を取れば、後は大嫌いなら社民党を追い出して、最終的には自分たちのやりたいようにやる。
政策の中身が正しいとはまったく思わないが、とにかく政権を奪取するためならなんでもやるという考え方は間違いではないし、それが自民党の長期政権の最大の要因だろう(かつての自民党内の派閥抗争にしても、根底には憎悪があったにもかかわらず、いざとなればいかようにも合従連衡した)。

一方の前原は「嫌いなものは嫌い」。この程度の人物が野党の有力者というのだから呆れてものも言えない。
民主党が野党に転落し安倍政権ができて3年。いまや麻生政権末期よりもさらに悪い状況である。
これだけの代償を払って得た教訓が、「好き嫌いで政治をやってはいけない」だというのであれば、前原の政治センスのなさは絶望的というほかない。
だったら今さら自らを戒めるより、むしろ好きな側へ行ったら?
その方がずっとわかりやすい。